続・たのしいUX(2015年を振り返って)

UXの位置づけが高まりを見せた2015年

今年は個人的にUXにまつわる大きな変化を2つ感じました。1つ目は、従来の設計方法論としてのUXDまたはUCDが、チームや組織での実行性にフロンティアがシフトしつつあること(一方でテクノロジーによる新たな地平の広がりもあります)。そこにはUIにとどまらない経験価値へのテコ入れへの期待があります。2つ目は1つ目の延長ですが、UXを経営課題にする試み(=CX)が少しずつ始まったことです。

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国内のUX界隈が今年どうだったか、上図のような活動レイヤーに分けて話すと整理しやすいため、それぞれ図中の番号順に雑感を語ってまいりたいと思います。

①UIでUXを良くする活動【(今後も絶頂)成長期】

この活動レイヤーについては多くを語る必要がないでしょう。

悪名高いいわゆるUX=UI的な(体験を生み出すタッチポイントという意味では、あながち間違ってもいなさそうですが、思考の手順としては違いそう)価値を生み出すレイヤーであり、価値創出の最前線として非常に重要です。体感できないUXはさすがに意味がありません。近年はモバイルシフトとiOS/Androidのネイティブアプリの盛り上がりから、新しいインタラクションデザインの領域がでてきたため、今年もUIデザイナー大人気の1年でした(「UXデザイナー」としての名称も普及してきました)。10年近く前にインタラクティブ性の高いPC Web(含Flash)が流行りまくった時と同じような雰囲気を髣髴とさせます。市場は巡りますね。

これからも新たなUIの基盤が生まれ、生活や仕事におけるデジタル浸透度もますます高まり、UIデザインもどんどん必要とされそうです。

②チームでUXを良くする活動【成長期(の端緒についた)】

プロダクト開発のリーダーにとっても、UXの重要性が認識されつつあった年ではと思います。プロダクトの方針だけでなく、開発プロセスやチームの価値観のデザインにも関わります。

この活動レイヤーを(揶揄するような)印象的な言葉に今年は出会いました、”Agile doesn’t have a brain.”です。初めてこれを見た時には、ピンときつつも中々エグいこと言うなと思いましたが、事実、よく遭遇するケースに思われます。UIの原理原則レベルにとどまらず、扱っているビジネス特有の狙いやターゲットユーザへの価値提供を考慮しながら「本当はなにを作るべきか」を知覚とロジックを総動員しながら吟味して統合してコンセプトに落とし込み、最終的にUIへと具現化することは中々ハードルが高く、UXの視点を強くもった強力なプロダクトマネージャー(または彼を補完するような存在)が求められていると思います。

たまたま読んだ、以下のProduct Thinkingの記事など課題意識に近いものがあります。

Building features is easy, building the right features for the right people is challenging. 

チーム活動としてUXを取り入れるための考え方として、「UX Maturity(組織がUXを扱えるレベル、成熟度)」というコンセプトも登場してきました。2016年も引き続き新しいチームの形が模索されていくんじゃないかと思います。個人的に、来年のテーマの1つはこの辺です。

③ビジネスシステムでUXを良くする活動【黎明期】

このレイヤーは上図で一応切り分けてみたものの、正直短時間では整理できませんでした。恐らく企業によって様々な形が考えられるからかも。もはや④に含まれることも多そうです。ともかく分けておく必要は感じます。一言でいってしまうと、あらゆる顧客接点を横断して経験価値をマネージする実行部隊の活動領域でしょう(CXOの到来が待たれます)。恐らく多くの組織内で真価を見せきれていないであろうカスタマージャーニーやXXキャンバスを活用する主体となるイメージです。

④経営システムでUXを良くする活動【黎明期(から一気に爆発しそう)】

米Capital OneによるAdaptive Pathの買収など、今年UX専門コンサル企業の買収が次々と起こりました。ビジネスにおける競争観点から、経験価値への注目が加速しています。

UCD/HCDにて人間中心の価値提供を実行する知が、100年を超える経営戦略の知(Wikipediaによるとハーバード・ビジネス・スクールは1908創立とのこと)と結びつき、デジタルテクノロジーというエンジンを携えながら大きく進化しようとしている領域に見えます。旧来の大企業は産みの苦しみを味わう一方、Uberのように社員(≒運転手)のマネジメントをUXを重視したエコシステムに整合する形でアルゴリズム化してスケールさせるとてつもない企業も存在します(機械的なシステムと人間の相剋へのチャレンジが最も面白いところ)。こちらについては来年も非常にエキサイティングな領域でしょう。

UXから人類へ

「UXとか(もういいよね)・・」なんて、うそぶく人が出始めたのも今年の特長ではないでしょうか(何を隠そう僕も其の一人かもしれない・・)。国内WEB系で早くからUXに興味があった周りの皆さんはいかんせん飽きっぽく、新しい知に常に飢えてお引っ越しする方が多い(笑)。

UXDは仕事レベルの知的フロンティアとしては踊り場にきているなーなんて思いましたが、冷静に考えるとそんなことはまったくない気がするので、実は問題が多すぎて思考停止しているか、はたまた組織内での実行に日々のマインドシェアを奪われて疲れているだけかもしれません。

8年ほど前ですが、個人的にUXというコンセプトに接して新しいと感じたのは何かをあらためて考えると、Webというプレイグラウンドにおいて、デザインという名のもとに統合された新しい経験の実験が繰り広げられ、認知科学とテクノロジー(とビジネスと参加者)が熱く接触していた点にある気がします。つまるところ、UXはWeb(テクノロジー)から離れるとやっていることは歴史的にも普通に思えてしまいます。

UXに携わる諸先輩方と同様、UXの背景を辿ると人類の存在レベルの問いかけに触れ、とてつもない知の体系に接続し、時折本屋をうろちょろしては卒倒しそうになります。そこにテクノロジーによるケイパビリティが絡むと、もはや世界を背負う気分です。Mっ気をだすようですが、そこがまたいい。

最後に、2016年も引き続きdigしていきたいテーマを書き連ねておきます。

  • 環境と知覚のインタラクションから生まれる情報、価値、意味(アフォーダンス理論)
  • 知覚も変えていこう(アンディ・クラーク)
  • 意識とは何か、意識の誕生(『神々の沈黙』←尊敬する友人ヨッピーに教えてもらった本)
  • 知覚を拡張する(IoT)
  • 拡張した知覚をシンプルなUXとして提供する(機械学習)
  • UXDをシステムとして見るには(ピーター・チェックランド、ドネラ・メドウズ)
  • UXをシステム的にデザインする(ゲームメカニクス、マーケットデザイン)
  • UXをより直に数学の問題に(コントラクトを計算問題にしたブロックチェーン)
  • 別に感じるままでいいじゃないか(イタリアのワインが本当に美味しい@神楽坂、荘子)

(beyond UX、UXerの趣味的射程)
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駄文にお付き合いいただきありがとうございました。来年もよろしくおねがいします。
@t_maeda


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